テニスのこと

テニプリを愛するすべての人に幸あれ

オタクとの関係がアツすぎるコンテンツ『ドリフェス!!!!!!』

 長く鎖国をしていた。穏やかな海に囲まれた美しい孤島で、優しい統治者のもと静かに暮らしてきた。この生活が永遠に続くと思っていた。

 しかし、異邦人は突然やってくる。かたくなに外界との交流を拒んでいた小さな島は、そのきらめきに目を奪われ、心をも奪われ、たやすく開国を許してしまった。

 2017年9月――十数年間テニスに引きこもってきたオタクにとっての、文明開化だった。

 私は「ドリフェス!!!!!!」にはまった。 

 

 

 作品の概要についてはすでに諸先輩方の先行研究がたくさんあるが、下の2記事は特にわかりやすいので読んでほしい。

 

アイドルとファンの距離感

 アイドルコンテンツ群雄割拠のこの時代で、『ドリフェス!!!!!!』が持っている個性を挙げろと言われたら、やはり私も「アイドル(キャラクター)とファン(ユーザー・視聴者)の距離感」と答えるだろう。

 アプリの『ドリフェス!!!!!!』には、乙女ゲームの要素が一切ない。ユーザーは、アイドルにとってたった一人の特別な存在(恋の相手やプロデューサー等)ではない。あくまで、たくさんいるファンの一人なのである。

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 ユーザーの立場は、画像左のホーム画面を見るとわかりやすい。リズムゲーム部分は「ライブに参加」している設定だったり、カード入手のために「ショップ」へ行ったりする。「チャンネル」ページでは、アイドルたちのWEB配信番組を見ているていでストーリーを追うことができる。これらの番組では、キャラクターの素の部分ではなく、アイドルとして振舞っている姿を見ることになる。“(作られた)アイドル”と、彼らに干渉できない“ファン”の関係が徹底されている。

 また、画像右はポスターやバッジ、ぬいぐるみを飾り、オタク部屋を作って遊べる「マイルーム」というページだ。玩具メーカーが関わっているだけあって、ぬいがすごくかわいい。

 開発の方も、このコンテンツが「乙女ゲームではない」ことを強調している。*1

実際にアイドルを応援している女性の話を聞くと、見返りを求めているのではなく、純粋にアイドルを応援をしているんですね。たとえば「あの高校のバスケ部にかっこいい男の子がいるから、放課後見にいこう」というような気持ちの延長線上に、アイドルを応援することがあるんだろうな、と。ですので、『ドリフェス!』は男性キャラクターと恋愛をする“乙女ゲーム”ではありません。

リズムゲームをする、つまりライブに行くと、ファンレベルが上がり、さらに彼らの情報を知ることができます。そこで我々がこだわっているのは、アイドルとは直接しゃべれないという設定です(笑)。あくまでも応援プロジェクトですから、アイドルとの距離が直接的に縮まるわけではありません。これも『ドリフェス!』の特徴です。

 アイドルを応援する気持ちはそれぞれだとは思うが、一方的に眺めていたい派の私には『ドリフェス!!!!!!』のスタンスがしっくりきた。

 また、『ドリフェス!!!!!!』にはアプリだけでなくアニメがある。そして、アニメのことを、キャラクターたちは「ドキュメンタリー」と呼んでいる。素の彼らを神の視点から俯瞰するのではなく、あくまでアイドルのテレビ仕事を見ている設定なのだ。*2

 そのため、驚くほど女性キャラクターが出てこない。アイドルたちと直接かかわって微笑まれるのは子どもかオバチャンなのだ。なぜなら、若い男性アイドルに求められているものがそれだから。「ドキュメンタリー」を自称しつつも、アプリの「チャンネル」と同じように、ファンに見せられる部分しか映していない。

 では、私たちオタクはその世界から排除されているのかというと、そうではない。私たちのような者は、ライブ会場の客席に座ってペンライトを光らせてカードをぶっ放す重要な役割を担っている。アイドルにはファンのエールが不可欠として、ファンの存在は積極的に肯定され、キャラクターは常に「ファンのために」と言いながら活動をしている。ファン(視聴者)は彼らにとってたった一人の特別な存在ではないが、アイドルを支える重要な存在として描かれているのだ。

 

地続き感の演出

ドリフェス!!!!!!』は、「地続き感」を強く意識させるつくりになっている。

 作中の特徴的な設定として、ファンはアイドルへの応援(エール)を「ドリカ(=ドリフェス!カード)」と呼ばれるカードで表現する点がある。バンダイだから。ライブ会場で「ドリカ」を使ってエールを送ると、アイドルたちがそのカードに描かれた衣装に着替えたり、ライブ中のパフォーマンスが変化したりする。意味がわからないかもしれないが、「ドリカ」はこの作品における唯一のファンタジー要素なので、深く考えるべきものではない。

 この「ドリカ」をアプリで購入する時の通貨は「円」だ。星や石ではない。はっきり書いてある、「10枚パック ¥2,000」と。『ドリフェス!!!!!!』の世界では、ファンはお金でこのドリカを購入しているのだ。この異様な現実味が、オタクの理性を失わせてしまう。さらに、ガシャで出てくるのはヒトではなく衣装なので、罪悪感なく回せてしまう。「ドリカ」の存在が、キャラクターたちの生きる世界と私たちの生きる世界を繋げている。

 アニメのシリーズ構成の加藤陽一さんは、「地続き感」についてこう話している。*3

プレイヤーがファンとしてドリカを選び、アイドルに贈って着替えてもらうシステムは、アニメでもきちんと基本の仕組みとして描いています。どんな作品でも、「アニメに出てくるものが本物に見えるかどうか」にはすごく気を遣っています。

 前述の、アイドルとファンの距離感とも合わせて、リアリティが強く意識させられるようになっている。

 もう良い大人なので現実と虚構の区別はつくが、ドリカ型ペンライトを初めて光らせてときのわくわくした気持ちは、セーラー戦士のグッズを手に入れた幼いころのそれと似ていた。まるで物語のなかに入れたような感覚。セーラージュピターにはなれなかったが、『ドリフェス!!!!!!』の作中に描かれるファンにはなれるのだ、このドリカ型ペンライトがあれば。そういった狂気を抱かせる力が、この作品にはある。

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ドリフェス!!!!!!』は、あらゆる面で、プロジェクトに関わっている大きな企業が、これまでの知識と経験を活かして綿密な計算で作っているコンテンツだ。そして、オタクにものすごく優しい。控えめに言ってサイコー超えてる。絶対に幸せになれるって約束するから、人類皆『ドリフェス!!!!!!』のアニメを見たほうがいい。本当に。

 

 

 

 

 この作品に出会って2日で狂い始めて、1か月以上が経った。

 ライジングビートの試遊イベントへ行った際にまったく歯が立たず、なにか適当なリズムゲームで練習しておこうとたいへん失礼な気持ちでアプリをインストールしたところ、ガシャで「ヌーディストブルーボディ」という気の狂ったドリカを手に入れてしまい、この作品は間違いないと確信した。なお、「ヌーディストブルーボディ」というのは、アイドルに着せると上半身裸にアクセサリーだけつけて踊っている姿が見られるドリカだ。

 それから、自分でも信じられないくらいアニメを見た。配信サイトに初めて登録し、3日間で2期最新話まで見た。オープニングの時点で、10代男子の足の指と膝と膝裏を舐めるように映すところが性癖に大ヒットだった。ストーリーもめちゃくちゃに面白かった。仕事が手につかないくらいトラフィックシグナルのことばかり考えていた。アニメをひととおり見た翌々日、DMMシアターに駆け込んだ。1週間後には、カード型ペンライトを振ってみたくてたまらず大阪行きの夜行バスに飛び乗った。主要な現場に行けるタイミングにこのコンテンツに出会えて本当によかったと思う。そして3日前、さすがにもういいだろうと思って一期の円盤を全部買った。

 

 今までテニス以外のものにほとんど心惹かれなかった自分が、なぜここまで『ドリフェス!!!!!!』に入れ込んでいるのだろうか。好きな理由はあまりうまく説明できないのだが、イヤだと思わされる部分がないところが好きだ。特に、アプリのガシャで出てくるカードがヒトではなく衣装なところが良い。ガチャでヒトが出てきたり、そのヒトを生贄にして他の人を強化したりすることが苦手だったので、衣装を合成して強化する、という設定はとてもありがたかった。ガシャは地獄だけど。

 あと、1話のライブシーンで「連れて行きたいのさ」と歌う奏くんがかわいさとかっこよさとセクシーさとあどけなさを全て含んだ表情をしていて最高だし、英語の資料を手渡された純哉くんが書かれている英語を読むのではなく「英語……?」と呟いたところに現実味がありすぎて中卒で最高だし、ステージではあんななのに普段は学ラン着て偏差値の低い高校に通ってるKUROFUNE最高だし、みんなごはんをいっぱい食べていてめちゃくちゃかわいいし、脚の長さとか妙にリアルで興奮するし、セリフにあまり助詞が使われていなかったり単語がとっちらかってたりとその場その場で言葉を考えながら生きている人間らしくて最高(10話の「どうしたの、純哉くん、今日、おかしくない?なんか、朝から」が特に最高)だし、DearDreamのみんな家族に愛されて幸せに育ってきたからこその性格の良さがにじみ出ていて最高だし、メッセージアプリで母親を「お母さん」と登録している高校2年生天宮奏くんマジで推せさしかないし、ドリフェスくん本当に天下獲ってほしい。最高なところ挙げてたら最高すぎて涙出てきた。

 周りには「声がちょっと……」と言う友人も多いのだが、もともとアミューズのオタクをしていたことがあったり、テニミュ若手俳優の演技に慣れていて声のつたなさが全く気にならなかったりして、私はなにもかも抵抗なく受け入れられてしまった。『ドリフェス!!!!!!』のオタクになるべくしてなったのかもしれない。

 人生はほんのちょっとしたきっかけで大きく変わるけれど、そこにはこれまでの経験が影響するんだなとしみじみ思っている。