怪文書

オタクに幸あれ

既視感と未視感【ドリフェス!R 噴水広場ミニライブ感想】

 日常のふとした瞬間、自分の置かれた状況に既視感を覚えることがある。

 その場面は、実はすでに一度見たことのある光景なのかも知れないし、もしかしたら自分の想像や夢の中での出来事だったかも知れないと言われている。

 このデジャ・ヴュ体験をしたいがために、池袋へ行ってきた。2017年11月3日、AGF――アニオタ・ゴリラ・ファイトである。

 アニメやゲームファンの女性をメインターゲットとしたこのイベントでは、会場となるサンシャインシティの噴水広場でトークショーやライブがおこなわれる。場所が場所なだけに、誰でも、どこからでも、無料で観覧できるものだった。

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 噴水広場でDearDreamとKUROFUNEがミニライブをする。それを知った直後、私は同じ時間帯に入れていた予定をキャンセルした。考えるより先に手が動いていた。絶対に噴水広場へ行かなければならないと思った。

 なぜかというと、ここをモデルとしたライブが、アニメ『ドリフェス!!!!!!』の9話で描かれていたからだ。結成直後のDearDreamが、地方のショッピングモールをまわった集大成としてライブをおこなったのが、サンシャインシティの噴水広場だった。

 

 私はこの9話が大好きだ。『ドリフェス!!!!!!』では、ファンのエールの大きさとアイドルの衣装の豪華さが比例する。観客のまばらな会場を回っているときはエールも少なく、服の上下もちぐはぐだった。それがしだいに揃っていき、華やかになり、噴水広場のライブではURカードの衣装に変身する。5人での曲の初お披露目だということもあり、ドリカタイムには全員分のドリカが映されるのだが、この流れが完璧で、見るたび泣きそうになってしまう。

 逆境に立たされてもくさらずに努力して、少しずつ状況を打破していくDearDreamの姿は見ていて本当に気持ちが良い。地方でのイベント会場の様子はあまりのリアルさに傍ら痛くて目を閉じてしまいたくなったが、そのぶんラストのカタルシスがものすごく大きい。9話は最高。*2

 

 つまり、サンシャインシティの噴水広場でDeaDreamのライブを見るということは、究極の聖地巡礼なのだ。SHIGEさんのいた場所に気付いたときは小躍りしたし、ドリカ型ペンライトに新しいドリカを装着しているときなど、あまりの“現実”っぷりに気が狂いそうだった。

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 開演直前には、Tシャツ姿のDearDreamとKUROFUNEによる公開リハーサルがおこなわれた。そしてミニライブが始まると、衣装*3に着替えたDearDreamが登場。アニメのオープニング曲である「PLEASURE FLAG」と「ユメノコドウ」を歌った。数分前に見た姿と違う衣装で出てこられると、自分たちの掲げているドリカをCatch Your Yell!!されたと錯覚してしまう。MCのあとは「ユレルMidnight」、「リバーシブル→バレンタイン」が続き、DearDreamは舞台からはけていった。その後、不穏なBGMとともに現れたKUROFUNEが「君はミ・アモール」、奏(石原くん)を加えての「薔薇の三銃士」、「シナリオ」を歌う。最後は7人での「ALL FOR SMILE!」、アンコールに「ありがとうの数だけ笑顔の花を咲かせたい」でミニライブは幕を閉じた。

 フルで歌った曲が6曲もあった。まったくミニライブではない。 ふざけるな、こんなものを無料で見せられてたまるかと憤りながらドリカを20枚買った。ブンブンボムパーカー姿の純哉くんを2枚見たがかわいいから許した。

 

 噴水広場のミニライブでは、その場にいたことがあるはずないのにいたことがあるような、この景色を知っているけれど初めて遭遇するような、不思議な感覚を味わった。アニメで見たDearDreamではないはずなのに、あの場で見たのは間違いなくDearDreamだった。

 二次元と三次元が混ざり合い、ひとつになって、オタクの頭をぐちゃぐちゃにしてくる。デジャ・ヴュだと思い込んでいた5次元は、どうやらジャメ・ヴュでもあったらしい。

オタクとの関係がアツすぎるコンテンツ『ドリフェス!!!!!!』

 長く鎖国をしていた。穏やかな海に囲まれた美しい孤島で、優しい統治者のもと静かに暮らしてきた。この生活が永遠に続くと思っていた。

 しかし、異邦人は突然やってくる。かたくなに外界との交流を拒んでいた小さな島は、そのきらめきに目を奪われ、心をも奪われ、たやすく開国を許してしまった。

 2017年9月――十数年間テニスに引きこもってきたオタクにとっての、文明開化だった。

 私は「ドリフェス!!!!!!」に狂った。 

 

 

 作品の概要についてはすでに諸先輩方の先行研究がたくさんあるが、下の2記事は特にわかりやすいので読んでほしい。

 

アイドルとファンの距離感

 アイドルコンテンツ群雄割拠のこの時代で、『ドリフェス!!!!!!』が持っている個性を挙げろと言われたら、やはり私も「アイドル(キャラクター)とファン(ユーザー・視聴者)の距離感」と答えるだろう。

 アプリの『ドリフェス!!!!!!』には、乙女ゲームの要素が一切ない。ユーザーは、アイドルにとってたった一人の特別な存在(恋の相手やプロデューサー等)ではない。あくまで、たくさんいるファンの一人なのである。

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 ユーザーの立場は、画像のホーム画面を見るとわかりやすい。リズムゲーム部分は「ライブに参加」している設定だったり、カード入手のために「ショップ」へ行ったりする。「チャンネル」ページでは、アイドルたちのWEB配信番組を見ているていでストーリーを追うことができる。これらの番組では、キャラクターの素の部分ではなく、アイドルとして振舞っている姿を見ることになる。“(作られた)アイドル”と、彼らに干渉できない“ファン”の関係が徹底されている。

 開発の方も、このコンテンツが「乙女ゲームではない」ことを強調している。*1

実際にアイドルを応援している女性の話を聞くと、見返りを求めているのではなく、純粋にアイドルを応援をしているんですね。たとえば「あの高校のバスケ部にかっこいい男の子がいるから、放課後見にいこう」というような気持ちの延長線上に、アイドルを応援することがあるんだろうな、と。ですので、『ドリフェス!』は男性キャラクターと恋愛をする“乙女ゲーム”ではありません。

リズムゲームをする、つまりライブに行くと、ファンレベルが上がり、さらに彼らの情報を知ることができます。そこで我々がこだわっているのは、アイドルとは直接しゃべれないという設定です(笑)。あくまでも応援プロジェクトですから、アイドルとの距離が直接的に縮まるわけではありません。これも『ドリフェス!』の特徴です。

 アイドルを応援する気持ちはそれぞれだとは思うが、一方的に眺めていたい派の私には『ドリフェス!!!!!!』のスタンスがしっくりきた。

 また、『ドリフェス!!!!!!』にはアプリだけでなくアニメがある。そして、アニメのことを、キャラクターたちは「ドキュメンタリー」と呼んでいる。素の彼らを神の視点から俯瞰するのではなく、あくまでアイドルのテレビ仕事を見ている設定なのだ。*2

 そのため、驚くほど女性キャラクターが出てこない。アイドルたちと直接かかわって微笑まれるのは子どもかオバチャンなのだ。なぜなら、若い男性アイドルに求められているものがそれだから。「ドキュメンタリー」を自称しつつも、アプリの「チャンネル」と同じように、ファンに見せられる部分しか映していない。

 では、私たちオタクはその世界から排除されているのかというと、そうではない。私たちのような者は、ライブ会場の客席に座ってペンライトを光らせてカードをぶっ放す重要な役割を担っている。アイドルにはファンのエールが不可欠として、ファンの存在は積極的に肯定され、キャラクターは常に「ファンのために」と言いながら活動をしている。ファン(視聴者)は彼らにとってたった一人の特別な存在ではないが、アイドルを支える重要な存在として描かれているのだ。

 

地続き感の演出

ドリフェス!!!!!!』は、「地続き感」を強く意識させるつくりになっている。

 作中の特徴的な設定として、ファンはアイドルへの応援(エール)を「ドリカ(=ドリフェス!カード)」と呼ばれるカードで表現する点がある。バンダイだから。ライブ会場で「ドリカ」を使ってエールを送ると、アイドルたちがそのカードに描かれた衣装に着替えたり、ライブ中のパフォーマンスが変化したりする。意味がわからないかもしれないが、「ドリカ」はファンタジー要素なので、深く考えるべきものではない。

 この「ドリカ」をアプリで購入する時の通貨は「円」だ。星や石ではない。はっきり書いてある、「10枚パック ¥2,000」と。『ドリフェス!!!!!!』の世界では、ファンはお金でこのドリカを購入しているのだ。この異様な現実味が、オタクの理性を失わせてしまう。さらに、ガシャで出てくるのはヒトではなく衣装で、カード自体もアイドルのブロマイドという設定なので、罪悪感なく回せてしまう。「ドリカ」の存在が、キャラクターたちの生きる世界と私たちの生きる世界を繋げている。

 アニメのシリーズ構成の加藤陽一さんは、「地続き感」についてこう話している。*3

プレイヤーがファンとしてドリカを選び、アイドルに贈って着替えてもらうシステムは、アニメでもきちんと基本の仕組みとして描いています。どんな作品でも、「アニメに出てくるものが本物に見えるかどうか」にはすごく気を遣っています。

 前述の、アイドルとファンの距離感とも合わせて、リアリティが強く意識させられるようになっている。

 もう良い大人なので現実と虚構の区別はつくが、ドリカ型ペンライトを初めて光らせてときのわくわくした気持ちは、セーラー戦士のグッズを手に入れた幼いころのそれと似ていた。まるで物語のなかに入れたような感覚。セーラージュピターにはなれなかったが、『ドリフェス!!!!!!』の作中に描かれるファンにはなれるのだ、このドリカ型ペンライトがあれば。そういった狂気を抱かせる力が、この作品にはある。

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ドリフェス!!!!!!』は、あらゆる面で、プロジェクトに関わっている大きな企業が、これまでの知識と経験を活かして綿密な計算で作っているコンテンツだ。そして、オタクにものすごく優しい。控えめに言ってサイコー超えてる。絶対に幸せになれるって約束するから、人類皆『ドリフェス!!!!!!』のアニメを見たほうがいい。本当に。

 

 

 

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ときめき体験ふたたび【GSオンリーコスプレイベント】

 前回の開催からおよそ1年半。10月7日、再びはばたき市へ行ってきました。

 

 今回のテーマは「文化祭」です。文化祭……そんなこともありましたね……。

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 でも大丈夫です。2017年の「文化祭」には阿鼻叫喚の物販はありません。そこにあるのは、愛に満ちた最高の空間でした。

 

 今回は文化祭の準備からみんなで参加できるとのことで、飾り付けのお手伝いをさせていただきました。制服を着たはば学生・はね学生がみんなで紙のお花を作ったり、風船を膨らませたり、展示物を並べたり、黒板に絵を描いたりする様子に、ただただ感動のためいきが出ます。全パラメータ上がっちゃう。

 自慢させてもらいますと、私が高いところでの作業に苦戦していると、氷室先生が手伝ってくれました。私の心のアルバムに氷室先生の新しいスチルが加わった瞬間でした。人差し指に養生テープをくっつけてこちらに差し出す氷室零一のスチルが。最高。

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 準備が済み、文化祭が始まると、廊下はたくさんの人でごった返していました。制服を着た生徒だけでなく、私服姿の「お客さん」も来ていたので、異様な現実味があります。

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  そして今回もすばらしい小物たち。こんなのどう考えてもはばたき市は現実でしょ。

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 見つけた瞬間「振り袖が買える!」と跳び上がったポイントカードです。12月23日まで節約しなくちゃいけないね。

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 教室での日常風景の撮影もありました。1stチームは、文化祭の出し物決め、帰りのホームルーム(プリントを配る様子)、掃除、学園演劇の練習風景を撮影しました。撮影の場面をてきぱきと考え、指示されているスタッフさんが格好良かったです。

 というか、葉月珪くんからプリントを手渡されたときの気持ち、わかります?最高です。世界は美しい。

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 女王のガウンも着ました(※画像左は公式文化祭で展示されていたもの)。こんなことまで体験させてもらっていいんですか?と思ってしまうくらい、はば学・はね学の文化祭に参加できたのです。息を吸うとはばたき市の空気が肺に入ってきて、それが体中にめぐっていく感じがします。

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 昨年と同様、このイベントは交流がメインということで、たくさんの方とお話することができました。愛と憎しみがまじって何度も灯台に来させている真嶋太郎くんに肩を抱いてもらって写真を撮ったとき死ぬかと思いました。

 前回参加していた方との再会は、完全に同級生との再会の雰囲気でした。自然に「久しぶり~!」と言い合える空間。あたたかすぎる。

 ランチタイム交流では、初対面の方と一緒に修学旅行の色サマが思わせぶりすぎてずるいという話題で盛り上がり、ヨタ高生が教室に入ってきたときは「キャー!不良!」などの茶番をしてはしゃぎ、自由時間には設楽先輩やカレン様を囲みました。そうして過ごしていると、ああ私ははば学に存在していてもいいんだなあ、みんなはばたき市で生きているんだなあと、涙が出そうになります。本当に楽しくて、幸せなイベントでした。

 主催さま、スタッフのみなさま、本当にありがとうございました。これほどの規模のイベント運営、大変さは想像もつきません。前回と同じ言葉になってしまいますが、はばたき市をこの世に作ってくださり本当に感謝いたします。

 12月、池袋のマルイでまたはばたき市のみんなと会えるのが楽しみです。

チョコレート白書2017

 今月14日に放送されたハッピーサマーバレンタイン特番*1において、2017年のバレンタインチョコ獲得ランキングが発表された。

 その際、許斐剛先生は、今年のバレンタインについて「(印象的だったのは)聖ルドルフ不動峰、六角など、初期校のキャラクターたちが上位にくいこんでくれたこと。初期校のファンの方々が長い間応援してくださっていることに感謝しつつ、これからもキャラクター一人ひとりを大切に育てていきたいと思います」と語った。

 2017年のバレンタインを象徴する最たるもの、それは天根ヒカルの1位獲得だろう。だが、彼以外にも、「初期校」キャラクターの活躍が目立っていた。

 今回は、「初期校」を、全国大会で青学と対戦していない「不動峰」「聖ルドルフ」「山吹」「六角」の4校とし、学校単位で焦点をあててバレンタインチョコ獲得数の推移を見ていきたい。なお、玉林・銀華・緑山に関しては、獲得数が少ないこと、年によって獲得数が大きく変化し平均が出しづらいことを理由とし、今回は割愛させていただく。

 

 

1.年ごとの概要

※正確な合計個数が発表されていない年もあるため、該当校(不動峰聖ルドルフ・山吹と青学・氷帝立海・比嘉・四天宝寺)のみでの合計個数で計算しています。

※玉林や銀華、緑山、城西湘南、名古屋聖徳、獅子楽、および学校に所属していないキャラクターやカルピンなどは除外しています。また、青学はレギュラーのみの個数としています。顧問も除外しています。

 2001年~2002年:青学一強の黎明期

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  学校ごとのチョコ獲得割合はご覧のとおりである。

 2001年は不動峰の神尾と伊武、聖ルドルフの観月がチョコレートを獲得。2002年には、不動峰聖ルドルフ、山吹、氷帝の4校の割合が5%前後とほぼ同じであった。

 

2004年~2005年:氷帝の台頭

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 2004年からランキングに六角が登場する。氷帝が大きく獲得数を増やした。2004年と2005年は、青学・氷帝だけで全体のおよそ8割。「初期校」の獲得割合は1~3%で、残りの1割を4校(+四天宝寺)、もう1割を立海で取るような状況だ。

 

2006年~2008年:立海の台頭

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 原作で全国大会決勝戦が描かれたことから、立海のチョコ獲得数が大きく増加。

 2006年のランキングからは比嘉が登場し、『テニスの王子様』で青学が対戦する学校がすべてバレンタインに出揃った。2006年~2008年については、青学・氷帝立海の3校で全体の9割のチョコを獲得している。「初期校」の獲得数は、それぞれ2%以下にとどまる。1%を割ることも珍しくなかった。

 

2009年~2010年:四天宝寺の台頭

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  序章が終了し『新テニ』が始まったこの時期、ミュージカルの影響から四天宝寺が大きく獲得数を伸ばした。氷帝の割合が多いことは変わらず、「初期校」以外の学校で全体の9割以上を占めている。「初期校」はそれぞれ3%以下となっており、2009年には聖ルドルフ・山吹の2校が獲得割合0.5%を下回った。

 

2011年~2013年:1位以外も1,000個超えの時代へ

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 2011年には35位で獲得数100個超え、7位で1,000個超え、2012年には46位で100個超え、5位で1,000個超えと、寄せられるチョコの数が跳ねあがった。(2010年には20位で100個超え、1,000個を超えたのは1位だけであった。)そんな状況で氷帝が約半数を獲得し続けるこの頃、聖ルドルフを筆頭に、「初期校」の獲得割合が伸び始めた。

 特に2012年。不動峰は07年以来の1%超え、聖ルドルフはこれまでで最も多い4.4%、山吹は2005年以来7年ぶりの3%超え、六角も過去最多となる4.3%を記録した。2006年以降11年まで、全体獲得数に対する4校合計の数は5%程度であったが、2012年には12.9%と、数字が跳ねあがった。

 続く2013年には、六角が10%を獲得。「初期校」4校合わせての獲得割合は27.5%にまで伸びている。比嘉を超える「初期校」も多くなった。

 

2014年:跡部と不二の年

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 2014年、「初期校」の割合は前年より下がるが、跡部に6万個以上、不二に約4万個のチョコが寄せられたことが影響している。数字だけを見て前年と比較すれば、不動峰は622個から1,734個へ、聖ルドルフは2,794個から9,643個、山吹は3,538個から7,849個へと、獲得数を大幅に増やしている。六角については、4,007個から1,945個へ半減した。

 

2016年:バレンタイン中止を経て

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 2015年のバレンタインチョコ獲得数集計中止を経ての2016年。集まったチョコの数は10万個を超えた。この年は伊武が総合2位となった影響もあり、不動峰の獲得数が10%と過去最高を記録。4校合わせての割合は21.4%だった。

 

2.2017年のバレンタイン

 そして今年、2017年の結果は下図のとおりである。

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 全体に対する4校合計の割合は36.7%で、これまでの年で最も高くなった。学校ごとの偏りが少なくなっていることは、グラフの色合いで一目瞭然だ。

 2017年の割合と、各校登場後から2017年までの割合平均を比較すると、山吹は約1.6倍、不動峰は2.5倍、聖ルドルフと六角は3倍以上のポイント増である。

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 2016年3月~2017年2月までには、U-17戦(試合があった日本勢は越知・大石、遠野・切原、種ヶ島、真田・幸村、跡部・不二)が描かれた。原作以外では、テニプリフェスタ2016においてキャラクターソングのランキングが発表され、「初期校」柳沢・木更津の「青い炎」が上位にランクイン。ミュージカルは「TEAM LIVE 聖ルドルフ」「TEAM LIVE 山吹」「Dream Live 2016」「青学VS氷帝」「青学VS六角」の公演があり、「初期校」は全校関わったことになる。ミュージカルに関して今年とほぼ同じ状況だったのは2012年のランキングだが、やはりこの年も「初期校」全校が前年比2~4倍程度に増えていた。バレンタインのランキングとミュージカルの興業は比例していると言えるだろう。

 さて、この「初期校」躍進は、2017年に突然始まったことではない。下のグラフで見ると、「初期校」の割合は年々増加傾向にあることがわかる。

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 2006年~2011年まで4校合計で全体の5%程度だったものが、2012年に12.9%、2013年に27.5%、2014年に12.5%、2016年に21.4%、そして2017年には36.7%となった。これにともない、青学や氷帝立海などの割合は縮小されている。

 

3.天根ヒカルについて

 今回1位に輝いた天根ヒカル。前年比でチョコレート獲得数10,038個増、順位は54上昇となっている。個人での獲得数が1万個を超えたのは、2014年の不二・跡部以来史上3人目である。

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 Twitterでは「天根ヒカルに1万個送った」と名乗るファンも見られたが、それが真実かどうかはさておき、こういった獲得数急増の場合、一人あるいは少人数のファンによる大量の贈り物が影響していることが多い。2016年3月から2017年2月までの1年間の、天根ヒカルの露出を考慮すると、今回もそうなのだろう。よって、「なぜ突然1位になったのか」という考察は、その一人あるいは数人がそう思い立った理由を訊かなければわからない。宝くじが当たってチョコレート購入資金ができたのかもしれないし、突然彼への想いが爆発して贈らずにいられなくなったのかもしれない。どんな背景があるにせよ、キャラクターへの愛を目に見えるかたちで示したいという思いからの行動には違いないだろう。

 

4.総括

 許斐先生の言っていたとおり、「初期校」の活躍がめざましいバレンタインとなった。

「初期校」という言葉は、青学と全国大会で戦っていない、原作初期に登場した学校をさす。しかし、それだけではなく、主人校である青学や、原作絶頂期に試合描写のあった氷帝立海と比べて、すこし人気の落ちる学校という印象があったことは否めない。*2

 いま、そのイメージは変わりつつある。バレンタインチョコレート獲得数推移や、テニフェス2016で全校のグッズが発売されたこと、2015年のキャラマイド*3での内村1位獲得などが作用している。「初期校」はやはり青学や氷帝立海と比べてファンの人数は少ないかもしれない。だが、少数精鋭であることを自分たちで理解しているからこそ、たくさんチョコレートを贈り、写真も印刷する。一方、これまで上位を占めてきた学校は、放っておいても、自分ひとりが頑張らなくてもチョコレートが集まる状況に慣れている。その意識の差が、ここ数年のバレンタインチョコレート獲得数に影響しているのではないだろうか。

 順位が一番大事なわけではない。勝ち負けだけが全てじゃないって誰かさんが言っていた。それでも、テニスの王子様たちが勝利を目指して試合をするように、やるからには勝ちたいと思ってしまうものだ。ましてや今回の缶バッジや特番でのコメントのように、思わぬご褒美が与えられることもあるとしたら、原作での出番やグッズ展開の少ないキャラクターのファンこそ張り切るのかもしれない。もちろん氷帝のファンだって張り切るけれど。

 今回のバレンタインは、記事のタイトルにあわせてこの言葉でしめくくりたい。「もはや『初期校』ではない」そう言える日は近い、と。

丸井くんはマジでカッコイイ

 丸井くんはカッコイイ。

 関東大会決勝D2戦を改めて読み返していたら、「丸井ブン太はカッコイイ」という思いが、胃の奥のほうからぶわっと湧き上がってきた。腹の奥からじわじわせり上がってきたものが喉のあたりでパァッと霧散するような、爽快感のある気持ちなので、横隔膜のあたりをキュッとしめつけ呼吸がしづらくなる「萌え」とは異なる感情なのだと思う。とにかく丸井くんはマジでカッコイイ。

 

 丸井くんのカッコよさを語る上で欠かせないのは関東大会決勝D2戦。先日、「あなたが選ぶテニプリベストゲーム」のアンケート*1が行なわれていたが、私にとっての「ベストゲーム」は、まさにこの試合だ。

 立海の強さを、青学が痛烈に実感する決勝初戦。冒頭から桃城の作戦を挫き余裕を見せ続ける丸井と、海堂との持久戦を真っ向から受ける桑原の圧倒的な力は、青学にも読者にも絶望感を与えた。

 そんななか、精神的にも肉体的にも全く敵わない王者に必死で食らいつく青学の勇ましさ。本来のプレーができない海堂をカバーする桃城の姿は、聖ルドルフ戦でのゴールデンペアを彷彿とさせ、彼らがしっかりと“ダブルス”をしていることがわかる。千石にダンクスマッシュを打たれたことのある桃城と、桑原にポール回しを打たれた海堂の反応も秀逸な対比になっている。また、かつて「体力で勝つ」と言った桃城と、「精神力で勝つ」と言った海堂だが、ここで、桃城は精神面の勝負に強く、海堂は体力で戦おうとする逆転現象が起こっていることも見逃せない。

 スコアだけ見れば6-1と大差だ。しかし、試合前に「どうしても奴らに一泡吹かせたい」「同感だな」と言っていた桃城と海堂が、その言葉通り、観客を「ここに来て全くの互角!?」「王者立海相手にこれほどやるとは…」と感嘆させ、丸井に「つい本気になっちまったぜ」と思わせた。最後の一球がネットだったときの丸井の表情から明らかなように、一瞬だけでも立海を脅かしたのだ。その結果が、丸井と桑原がパワーリストを外したことと、真田が「全員パワーリストを外せ」と言ったことだ。青学など歯牙にもかけないつもりでいた立海の余裕の姿勢がわずかにゆらぎ、王者の牙城が崩れはじめた。その流れを、息つく暇もない試合展開と爽やかさを残す結末で描いた最高の試合が、関東大会決勝D2である。この時期の絵は安定して美しいことも加えて、珠玉の試合のひとつと言えるだろう。

 どう頑張っても文字だけでは魅力を伝えきれないので、とにかく今すぐこの試合を読んでほしい。 そして感じてほしい、許斐先生の演出力の高さを。

 

 本題から逸れてしまったが、私は、テニスをしている丸井くんの一番カッコイイところは「余裕」と「冷静さ」だと考えている。

 桃城から「パワーリスト外して貰えませんかね」と言われたとき、それを受け入れないのは当然として、拒否するのではなく、「外させてみろ」と答える器の大きさ。海堂にブーメランスネイクを打たせたとき、海堂との持久力勝負で機会を待っていたときの、桑原への信頼。その場しのぎの動きをするのではなく、試合を俯瞰で見られる肝の太さ。新テニならば、遠野のギロチンをくらった直後の態度や、ドイツの強さを目の当たりにしたときの「仕方ない」発言。

 それが、許斐先生をして「かわいい系の顔をしているんだけど、セリフは何気に男っぽくするよう意識しています」*2と言わしめる男・丸井ブン太

「冷静さ」については、20.5*3 (関東大会決勝D2の決着がついていなかった時期に編集)には記載されていないが、40.5*4(全国大会決勝D1前に編集)では言及されている。20.5と40.5では書かれている内容がだいぶ変わっているので、関東大会決勝D2の一戦を通して、丸井の冷静さが表現されたといえる。また、「余裕」については、新10.5*5で「普段は余裕のあるプレイを心がけている」と書かれている。

 実力に裏付けされた余裕があり、その余裕を揺るがされるようなことがあっても、あまりそれを表に出さなず、飄々としていられる。そして、物事を冷静に見極め、瞬時に的確な行動を取れる。すべて、彼が精神的にも身体的にも強いからこそできることだろう。

 マジでカッコイイ男なのだ、丸井くんは。

*1:https://twitter.com/All_tenipuri_ev/status/882058657030062081

*2:

ペアプリ Vol.7 新テニスの王子様 公式キャラクターガイド (ジャンプコミックス)

ペアプリ Vol.7 新テニスの王子様 公式キャラクターガイド (ジャンプコミックス)

 

*3:

テニスの王子様公式ファンブック (20.5) (ジャンプ・コミックス)

テニスの王子様公式ファンブック (20.5) (ジャンプ・コミックス)

 

*4:

テニスの王子様 40.5―公式ファンブック (ジャンプコミックス)

テニスの王子様 40.5―公式ファンブック (ジャンプコミックス)

 

*5: