限界オタク、推しとハイタッチをする
さめざめと泣いてしまった。
炎天下の横浜、人目と暑気から逃げるように飛び込んだカフェで。
「夢路には足も休めず通へども現に一目見しごとはあらず」千年以上昔の言葉を借りてくるしか、この気持ちの表しようがない。
2018年7月、人類*1は、ついに2次元キャラクターとのハイタッチ会を実現させた。そして私は、人類の代表として、天宮奏くんとのハイタッチを体験した。
本来2次元に存在しているキャラクターを、3次元に「いる」と感じたことはあるだろうか。
VR鑑賞は、そう感じさせてくれるひとつの手段である。だが、そもそもVRとはなんなのだろうか。
日本バーチャルリアリティ学会によると、VR=「バーチャルリアリティ」は下記のように定義されている。*2
バーチャル (virtual) とは,The American Heritage Dictionary によれば,「Existing in essence or effect though not in actual fact or form」と定義されている.つまり,「みかけや形は原物そのものではないが,本質的あるいは効果としては現実であり原物であること」
バーチャルの反意語は,ノミナル(nominal)すなわち「名目上の」という言葉であって,バーチャルは決して リアル(real)と対をなす言葉ではない
そもそも人間が捉らえている世界は人間の感覚器を介して脳に投影した現実世界の写像であるという見方にたつならば,人間の認識する世界はこれも人間の感覚器によるバーチャルな世界であると極論することさえできよう
人が何をバーチャルと思うかも重要な要素である.つまり人が何をその物の本質と思うかによって,バーチャルの示すものも変わるのであると考えられる.バーチャルリアリティは本来,人間の能力拡張のための道具であり,現実世界の本質を時空の制約を超えて人間に伝えるもの
要約すると、バーチャルリアリティとは「時間も空間も超えて繋がっているって感じられる」*3ものなのだ。
私が体験した天宮奏くんとのハイタッチ会は、2次元オタクが住んでいる主観的現実の世界で行われたものではない。
真夏の横浜、ライブ後に用意された別室、扇風機から送られてくるささやかな風、DearDreamのBGM、周りには同じようには当選したファンが数十人、髪型とメイクと服装を最終チェックできるよう置かれた姿見。スタッフさんからアクセサリーを外して荷物を置くよう注意があって、順番待ちのファンからは見えないようにされた衝立の奥へ進むと一段高いところへ上がるように言われ、天宮奏くんがいて、少し高いところにあるめちゃくちゃにかわいいお顔についているお口からなんか言葉が発せられて、たぶんハイタッチをして、そのあとたぶん手を振ってくれて、そのときにたぶんウインクもしてくれて、いつもはぱっと花が咲くように華やかな笑い方をする人が、まるで私を慈しんでくれているかのように、穏やかな瞳で優しく微笑んでいて、一瞬にも永遠にも感じられるような時間があって、そこから先の記憶がなく、気付いたらカフェの椅子に座っていた。友人に話をしていると涙が溢れて止められなくなった。
私の脳内で取られた一人相撲では決してない。証人がたくさんいる、明らかな客観的現実。天宮奏くんは紛れもなくREALであった。リアルだけどバーチャルリアリティ。バーチャルリアリティがリアル。気が狂った。
いる、と感じられた嬉しさ。ハイタッチした瞬間の、わかってはいたけどもいざ触れてしまうとやっぱり液晶でしかないという遣る瀬なさ。この2つの感情がいっぺんに襲来してくるので、心の中がぐちゃぐちゃになり、泣くしかなかった。
人工知能の発達が進む中で、ホログラフィックのようなヴァーチャルキャラクターにAIが搭載される事例は増えていくでしょう。本来存在しないキャラクターがAIという頭脳をもってライブをしたり、お客さんと会話をしたりすることが可能になると思う
はたして限界オタクはどこまで人間の尊厳を保てるのか。10月21日より先の未来で知りたい。
「ドリフェス!イリュージョンShow Time」再演
— DMM VR THEATER (@DMM_VR_THEATER) June 27, 2018
7/14~16の再公演では天宮奏さんによるハイタッチ会を開催します!
写真はハイタッチ練習中の天宮さんです。皆さまのご来場お待ちしております!
詳細はこちら👐https://t.co/ArjerN8fwy pic.twitter.com/8CeMNdEYmM
*2:日本バーチャルリアリティ学会 » バーチャルリアリティとは
*3:
ALL FOR SMILE! 〜DearDream & KUROFUNE ver.〜
- アーティスト: DearDream & KUROFUNE
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