怪文書

オタクに幸あれ

アイドルのハッピーエンドを考える

 私が「無理っしょ」と思っても、「イケるっしょ!」と返してくれるイマジナリー天宮奏くんは出てきてくれなかった。彼はーーもうひとりの彼は、一度ぐっと言葉に詰まりながら、9時間前に見た悪夢の続きを私たちに伝えた。

 2018年3月5日、21時すぎの話だ。

 3次元の彼らは役者だから、あの表情はすべて演技だったのかもしれない。ならばあっぱれだ。でも、「すべてはキミの笑顔のために」と謳って、歌ってきたプロジェクトの「一旦の区切り」を告げる場にわざわざあの顔を作ってきたというのなら、芸能人やめちまえ、って思う。

 

 アイドルは、どういったさいごを迎えれば、ハッピーエンドと言えるのだろうか。
 フィクションの乙女ゲームならば、アイドルと主人公の幸せな未来が描かれてハッピーエンド。12話で終わるアニメなら、デビューが決まったり、ライブが成功したりする最終話がそうだ。
 では、ノンフィクションのアイドルには、「“応援”プロジェクト」のアイドルには、どんな幕引きがふさわしいのだろう。

 私は、テレビで流れてきた映像でしか、アイドルのおわりの瞬間を見たことがない。人気絶頂のなかステージにマイクを置いて辞めた人がいた。問題行為を起こして芸能界を去った人もいた。知らないうちに解散していた人たちもいた。優勝という最終到達点をもつスポーツ漫画とは違う。大団円を迎えたアイドルは、きっとそんなに多くない。

 

 3月5日の12時と21時、その報を受けたとき、とても悲しかったと同時に、なんという綺麗事なのだろうと思った。(「綺麗事」は、「実情にそぐわない、体裁ばかりを整えた事柄。」と「手際よく美しく仕上げること。」という2つの意味をもつ*1が、そのどちらにも当てはまる。)

 アーティストが、目標のひとつであった武道館ライブで、ファンに惜しまれながら、「一旦」の「区切り」を迎える。美しい幕引きではないか。私の理性はそう言う。

 彼らに定められていたゴールがどこなのか、オタクには知る術などない。1st LIVEのBD*2には「ゴールってのはないんだけどね」というコメントがしっかり収録されているので、少なくとも彼らは、この時点では明確なゴールを描いていなかっただろう。

 活動期間2年半のうち、私は半年しか知らない。

 でも、今年15周年を迎える2.5次元開拓者のテニミュは、2年半で何してたと思う? ファーストシーズンの関東氷帝公演だよ。あいつこそがテニスの王子様の、あの公演だよ。全然じゃん、まだまだこれからじゃん。ここからのぼりつめたんじゃん。だから、宇宙初の5次元アイドルであるドリフェスくんも、2年半より先を考えてもよかったと思わずにはいられない。

 

 1st LIVEはR1話、R11話はツアーに繋がった。アニメはハッピーエンドで幕を閉じ、その先の物語はアプリに繋がっている。

 では、アプリのほうはどうすればハッピーエンドになるのか。You are my RIVALは、Whole New Worldは。慎と純哉のほぼ個人イベストがあったんだから、残りの5人にだって用意されていたんじゃないのか。ツアーを振り返るミラステはどうなる。ウサギ耳ネコ耳ばっかり出しやがって、もっとイヌ派のフォローもしろ。消化不良だ。

 このあと武道館を匂わせて、3次元にバトンパスして。そして3次元を締めて「区切り」か。それがドリフェス!プロジェクトの選んだハッピーエンドか。その潔さ良し、武道館ライブが2+3−2次元にならないような演出ならば受け入れるしかないけれど、「けれど」の逆接付きだ。「けれど」の先の感情は、まだまとまらない。

*1:綺麗事(きれいごと)の意味 - goo国語辞書

*2: