怪文書

オタクに幸あれ

わたし負けましたわーーBATTLE LIVEで感じた5次元

 BATTLE LIVEとは、「ファンからのエールをより多く集めたやつが勝ち」という、至ってシンプルなルールの闘いである。

 その「BATTLE LIVE」の名を冠したイベントが、3次元に実現した。2018年2月3日・4日の2日間、KUROFUNEのもつ情調と会場の熱気とが融けあい、会場は異次元と化した。

 

 タイトルには「BATTLE」、出演者はSNSバチバチアピール。いったいどんな闘いになるのかとそわそわしていた。ファンのエールを多く集めたほうが勝ちというルールなら、こういうシステムになるのかもしれないなどと思ってもいた。

 しかし、数字で勝敗を決めるような演出は一切なく、実際の闘いは、KUROFUNEとDearDreamが曲やファンを取り合うところに凝縮されていたように思う。特に、4日のMC中に起こった「DearDreamの女だよな!?」「KUROFUNEの女だよな!?」「俺のミ・アモールだよな!?」「かおるのかおるだよな!?」「富田の富田だよな!?」というファンのエールの獲り合いは、BATTLE LIVEのバトルらしさを一番感じた場面だ。なお、最後には「もう何でもいいんだろ!」と穏やかなオチがついていた。

 

 だが、BATTLE LIVEはKUROFUNEとDearDreamだけの闘いだったのかと問われたら、答えはノーだ。なぜか。それは、私達ファンも、闘いに参加していたからである。

 そして、私は負けた。完全敗北した。2日間であらゆるものに負けたと感じた。その瞬間の思いを書き残しておきたい。

 

 

Shoot! Raid!

 ド初っ端の変身シーン生演奏。アイドル活動のなかでも特に歌を重視するKUROFUNEのバックに生バンド。ドリフェスくんの“粋”をここに見た。やはり生の音楽の持つ力は強い。

Whole New World

 一曲目から誰に負けたかというと、KUROFUNEの男にである。やはり女の声では少し物足りないと以前から実感してはいたが、間近で地響きのような開国コールを耳にし、完全に負けたと思った。KUROFUNEの男たちの開国コール、サイコー超えてたよ。

 Up to speed!

 これは私がドリフェスというコンテンツに投降した昨年11月に東京湾を眺めながら泣いた大好きな歌詞なので、無条件で敗北。

BIRDCAGE〜欲望の鳥籠〜

 5列目で浴びた戸谷公人さんの回し蹴りかっこよすぎ負けた。ここまでの3曲全部ロック楽曲だよ(アプリ準拠)。冒頭からこんなに飛ばして、これから一体どうなってしまうのかというワクワク感がすさまじかった。

ARRIVAL -KUROFUNE Sail Away-

 もはや勝ち負けがどうとかではなく、開国。winnerのarrival。

ユレルMidnight

 ここぞというときのパトライトみたいな照明でアガりすぎ帰伏。

インフィニティ・スカイ

 あからさまに狙ってきたギャップに一瞬でも萌えを感じたので敗北。

君はミ・アモール

 いつも笑顔のDearDreamがキリッとした表情で蟹ダンスをしたことにより前奏で敗者となることが確定した。「We'll Be In Your Pleasure」は聞くたびに慄いてしまうが、風間圭吾ではなくDearDreamがその歌詞を背負うとまた趣が変わるのだと気付かされた。

ユメノコドウ・NEW STAR EVOLUTION・PLEASURE FLAG

 DearDreamの赤担当に心をジャックされており無条件降伏してしまったので記憶がない。おばあちゃんになってもプレフラ間奏終わりの投げキスで元気いっぱい沸きたい。

薔薇の三銃士

 昨年のAGFでは、これが始まった瞬間、30分前にその場で初めて会った隣の人に抱き付いてしまったくらいには好きな曲とメンバーなので今回もホールドアップ。間奏のセリフで腰抜かした。

リバーシブル→バレンタイン

 可愛いという感情を溜めに溜めておいたダムを決壊させたWMのあと同じ振り付けで出てくるKUROFUNEにより会場中の穴という穴から汁が出て大洪水。

MAY BE, LADY!

 神様ありがとう。それしか言うことなくない?

FACE 2 FAITH

 なにもかもが純粋に格好良いのでこの曲で勝とうなんて初めから思っていない。DMMシアターで見た振り付けと、アプリのあのカメラアングルをいつかどこかで見たい。

ありがとうの数だけ笑顔の花を咲かせたい

 エモ楽曲のエモアレンジでエモな雰囲気になったうえ、出席確認からの流れで石原さんが「イーヤーサーサー」の合いの手を入れた(沖縄出身の方がいた)ため5回くらい落城した。

SAKURA LETTER

 DearDreamがしっとりと歌い上げているだけでもずるいのに、最後の最後でインフィニットヴォヤージュのKUROFUNEがすっと入ってくる抜け目の無さ。インフィニットヴォヤージュ着たあの2人に勝てる? 私は勝てない。

BEST☆★PARTNAER

 ファンミ03でのフリに「俺たちのベストパートナーはファンのみんな」というような言葉があり、今回もそう言っていたと記憶している。だが、この歌詞はKUROFUNEにとても合っているので、あなたたちのベストパートナーはそれぞれ横にいる相方だよ……私たちじゃないよ……と勝手に負けた気分になった。

シナリオ

 勝つ気どころか、まず闘う気すら起こらないからね。

Future Voyager

 2次元のKUROFUNEにとって大切な一曲を、3次元でもこの日まで大事に大事にとっておいてくれたという事実が御膳上等。ありがとう。

ALL FOR SMILE!~Shoot!Raid!MIX~

 この曲をこの場面でShoot!Raid!MIX。DearDreamなしでのAFS。BATTLE LIVEがKUROFUNE主体のイベントだということをここにきて改めて感じさせてくる演出。完敗。

Paredeが生まれる

 この曲をこの場面で、KUROFUNEだけで歌うなんて。天才すぎる。歌詞を「おばあちゃん」から「おじいちゃん」にしたところもとても良い。

Dream Greeting!

 ラストにこれを持ってくるセンス。奇をてらいすぎず、かといって無難すぎるわけでもないこの感性に万歳。

 

 

 この日の行動や言動を「9割戸谷、1割プリンス」と言う戸谷さんに対して「100割株ちゃん」と返していた株元さん。「分けるとか分けないとかじゃないんだよね、勇人は俺の中にいるから」「アイドルとは何か、それを勇人と一緒に考えて、歩んできたような気がします」とも語っていた。

 これまでの姿を長く見てきたわけではないが、彼が葛藤し、少しずつ2次元と妥結してきたからこそ、「お前らのエールがある限りKUROFUNEは走り続ける」なんて叫びが出てきたのだろうか。

 

 

 ドリフェスについて考えるとき、3次元と2次元のつながりを取り上げることがある。3次元のもつ一面が2次元キャラクターの構成要素になっていることや成長など、2人、ひいては14人に、さまざまな共通点が見られるからだ。そして、数ヶ月間このコンテンツを見てきて、3次元側の人間は、もはや2次元のキャラクターにとって単なる“演者”ではないと実感している。

 

 一般的なコンテンツでは、キャラクターの存在が先行し、それを声優や俳優が追っていく(ただし、私が詳しく知っていて比較対象にできるのは『テニスの王子様』だけなので、一般というよりは“模範”なのかもしれない)。原作、あるいはキャラクターの性質やビジュアルが最優先の、トップダウン型といえる。演者は、声や見た目、行動などにあらわれる自分の要素を消して、キャラクターになりきろうとしてくれる。私は、声優さんも2.5次元俳優さんもみんな原作者やキャラクターの支配下にいるものだと考え、その手法が正しいと信じてきた。

 一方、ドリフェスのキャラクターづくりは、ボトムアップ型だ。キャラクターについてのおおまかな枠があり、そこに中身を入れていく。その中身となるものに、3次元側の要素がある。たとえば、3次元側の好きな食べ物が2次元側の好きな食べ物になっていたり、3次元側で撮られた写真と同じポーズが2次元側に採用されたりする。かと言って、『はじけてB.B.』や『娘。物語』のように、実在の人物を描いたノンフィクションではないので、3次元側が2次元側を支配しきるということはない。このやりかたが非常に巧みなのだ。絶妙なさじ加減で、「5次元」という謎の言葉に説得力を持たせてくる。

 BATTLE LIVE中にも、「5次元」を感じた瞬間があった。

 3日のMC中に戸谷さんのイヤモニが壊れてしまい、舞台上に残された株元さんが一人で「シナリオ」を少し歌った場面だ。「どうしよう、ソロでシナリオ歌う? でも声出ないよ」と冗談ぽく言ったところ、客席から「イケるっしょ」コールが起こり、ワンフレーズだけ歌った。もしも2次元の黒石勇人が同じ立場になったとして、やはり彼も、ここで歌う以外の選択をしないだろう。3次元で起こったことを、これは2次元でもありうるな、と自然に受け入れられてしまった。一般的な(“模範”的な)コンテンツでは学級会になるようなことでも、はじめから「そういうもの」という前提があるドリフェスでは、承服の対象なのだ。これはおそらくドリフェスにしかない、3次元側と2次元側の特殊な結びつきだと思う。

 余談だが、昨年12月、DMMシアターでのKUROFUNEトークショーの冒頭で、MCが「風間圭吾役の~」「黒石勇人役の~」とキャストを紹介した。そのとき、ものすごく違和感があったのだ。そうなんだけどそうじゃない、と。最後の挨拶では「風間圭吾こと~」「黒石勇人こと~」に修正してきていたので、やはりそこにはこだわっているのだなと感じたことを覚えている。

 

 3次元と2次元の関係については日々意識を更新させられているのだが、ここ1週間ほど考えている構造は下図のようなものだ。各種メディアで「パラレルで活動」「体現」などと表現されていることから、3次元側と2次元側が、魂のようななにかを共有した別の存在であることがわかってきた。

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 だから、株元さんの「勇人は俺の中にいる」「一緒に歩んできた」という言葉や、戸谷さんの「圭吾と勇人を感じる瞬間があった」という感想がぐっときた。このコンテンツのあり方にかんして、舞台に立っている側の方も感慨にひたってくれているんだと、オタクはとても感動した。

 

 最終日はアンコールの声が出るのが遅かったとのことだが、あれは、あまりにもライブの内容が良く放心していたので拍手しかできなかったためである。3次元の人間が2次元のキャラクターを憑依させていたのではなく、完全に“4人”の姿が見えてしまったせいで(頭は大丈夫です)、何もできなくなってしまったのだ。

 KUROFUNEに、最初から最後まで、わたし、負けましたわ。

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