読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

テニスのこと

テニプリを愛するすべての人に幸あれ

氷帝は眠らない(宍戸亮の回)

f:id:mihoko_le:20170320183355j:plain

 アニメイト横浜でのイベントに参加してきました。

 イベントタイトルは「氷帝は眠らない」。KONAMIから発売されたカードのブースターパック名です。最近まで肺炎にかかっていて、さらに先日倉庫で高いところから落ちて肋骨にヒビが入っていた松井Pいわく「なんか好きで、いつか使いたかったから、今回コナミさんから拝借した」とのこと。2015年の秋から、忍足、日吉、宍戸と氷帝のアルバム作成が続いたにも関わらずリリースイベントを開けなかったことが気になっていて、今回の開催に至ったそうです。

f:id:mihoko_le:20170320183429j:plain

宍戸亮2ndアルバムの話題

●「HPG-オレたちの冒険-」

 中1として歌うか、回想として中3の声で歌うかとても悩み、最終的に中1として演じたが、反応が心配だった。でも好評だったので、楠田さんいわく「またこの3人で何か歌いたい」。

 間奏に入っている恐竜の鳴き声をあてたのはうえださん。収録のときに「恐竜どうするの?俺やろうか?」と言ってくれたそう。うえださんのあまりの恐竜っぷりにスタジオの皆がスタンディングオベーションだったとのこと。

 

●「Revolution」

 楠田さんが作詞・作曲を担当している曲。サビの「這い上がれよ 振り返るな」のメロディーは、許斐先生のツイートにヒントを得て、シ、シ、ド、ラ、シ、ドの音になっている。

 

●「此処にいる」

 当初は予定になかった曲だったけれど、気付いたら、アルバムタイトル「I'll be right here」と同じ題になっていた。UZAさんは尾崎紀世彦をイメージしていたとのこと。

 

●「Bring it on!」

 これまでの宍戸と鳳のデュエットにはなかったタイプの格好良い曲。だけど歌うのが難しく、浪川さんは「いや~難しいっすよ」と言いながらスタジオに入ってきたらしい。

 

テニフェスの話題

 DVD・BDの発売に先行して、テニプリフェスタ2016での「愛してるぜ!」の映像を見せてもらいました。サビのコールを客席もするのですが、皆記憶が曖昧なので歌詞に自信がなく、画面にしっかりと歌詞が映る「My Love」のところだけやたらと声が大きい。松井さんに「お前たち宍戸のオタクなのに歌詞をきちんと覚えていないんだな」というような笑い方をされたのが悔しかったので、帰りの電車で歌詞全部覚えました。

 1/800のランキングは「投票するときの気分や、テニフェスで歌ってほしい!という気持ちが加わっての結果であって、それが全てだとは思っていない」と楠田さん。楠田さんは、武道館で絶対に歌いたいという思いから、毎日「愛してるぜ!」に投票していた。

 

許斐先生の話題

●「キミが待つ家まであと6分」の歌詞が送られてきたとき、UZAさんら数人の作曲家が誰ひとりとしてその歌詞からメロディーを想像することができなかった。当時は先生がここまで作詞作曲に積極的になるとは思っておらず、「先生に送り返すわけにもいかないし……」と困惑。最終的に、一人が「あ、俺なんかちょっとわかってきたかも」と言い、メロディーがついた。
●「テニプリ✮パラダイス」等で歌詞を“詰め込む”という新しい歌の作り方を生み出した許斐先生。UZAさん「許斐先生はロケンロール」。

★先生の作った楽曲について、例によって歌詞から音が想像できないため、先生の頭の中にあるメロディーをきこうと松井Pが電話。すると、先生は電話口でその曲をフルコーラスで歌った。ワンフレーズとかではなく、フルコーラス歌った。録音する間もなかったのに、歌った。とりあえずその場は電話を切り、後日アレンジャーさんが連絡しなおしてメロディーを確認した。

 

アンケートの話題

f:id:mihoko_le:20170320183501j:plain

 開演前に待機列で配られたアンケートです。2017年3月18日のイベントです。平成29年です。このデータが送られてきたとき、松井さんは「手抜きなのか本気なのか」と困惑したそうです。

 アンケートの中に「宍戸さんに質問orリクエスト」という欄がありますが、これへのコメントで「(宍戸は)氷帝メンバーとでかけるならどこへ行きますか?」というものがあったとのこと。それに対し、楠田さんは「知らないよ!おれ宍戸じゃないもん!」。この設問は、楠田さんが答えるためではなく、今後新しいキャラクターソングをつくるときの参考にするためのものだったそうです。

 また、「夢の中に宍戸さんが登場!何て言われたい?」という設問に「誕生日なので祝ってほしい」との文があったため、「誕生日おめでとよ!」と言っていました。「どらぁ!起きろ!」も言ってくれました。

 

生歌

 冒頭に「愛してるぜ!」、イベントの最後にはUZAさんのアコースティックギター演奏での「此処にいる」「恋の激ダサ絶頂!」が歌われました。「恋の激ダサ絶頂!」の「こんなに汚れた~」の部分は語りになり、なぜか最後に「長太郎~!」の叫びが。この叫びはUZAさん発案だそうです。

 

その他の話題

 プレゼントタイムでは、歌詞カードにサインを入れるため客席からペンを借りる流れになりました。黒のサインペンが差し出されるも「水色がいい」と言ってなかなか受け取らない楠田さん。そんななか颯爽と氷帝カラーのコピックを出す猛者。すごいよね、コピック持ち歩いてるの。これからは私も常に水色のペンを持ち歩こうと思いました。

ボールが見えた

 

DUNLOP(ダンロップ) 硬式テニスボール SAFETY TOP FORT [ フォート缶 ] 1缶(2球入)

 

 ボールが見えた。絶対に見えた。完全に“ボール”を見た。

 

 先日、「ミュージカル『テニスの王子様』3rd season 青学VS六角」をアリーナ最前列センターブロックで観た。

 そのとき、“ボール”が、舞台の上から滑りおちるように私の足元へやってきた。海堂がラケットを振っていたので、おそらくS3試合中に彼が取り逃した球だったのだろうと思う。“ボール”がコートで弾む音もいつになく鮮明だった。私ははっとして足を少し浮かせたし、隣に座っていた人もびくりと身をすくませ、声を呑んでいた。そこには、“ボール”があった。もはや本物の“テニスボール”だった。

 テニミュにおいて、試合のラリーシーン等に登場するボールは、ほとんどが照明で表現されている。だから、私の足元へ落ちてきたのも、ボールではなく、ピンスポットの光だ。照明が、たまたま私の足元を照らしただけだ。それはわかっているのに、音と、光と、文字通り目の前にいる海堂薫の動きや表情、舞台上と客席の空気が全部合わさって、本当にボールが見えたような気がしてならない。

 テニミュのボールは見える人(=テニミュに好意的な人)には見えるとされ、私も散々見える見えると言ってきたが、これまで口先だけで話していたのとは全く違う「見える」体験が、そこにあった。例えるなら、ブーメランスネイクで足元をボールが通っていった審判や、波動球をくらった河村が近くに飛んできた観客のような気持ち。ほかのことを考える余裕もなく、「“ボール”がとんできた!」と感じた。

 ストーリーやキャラクター云々ではなく、こういった面でも、『テニスの王子様』の世界を感じさせてもらえるのは、とても嬉しい。最近流行りのVRとはたぶんまた違う、生の感動を、これからも味わいたいとしみじみ思う。

2016年テニプリ新語・流行語大賞

  2016年テニプリ新語・流行語大賞は、2015年12月から2016年11月までの間に、テニプリ公式(原作者・漫画・アニメ・ミュージカル・グッズ等)から発せられたことばのなかで、多くの人の心を動かし、一年間を象徴するにふさわしい語を選ぶものです。

 今年も数ある名言のなかから、「ハッピーメディアクリエイター」「彼らは本当にいるんです」「悲しいね…キミが近すぎて」「もぬもぬ」「やれ! Do it!!」「ギリッ…シャ」「パラダイス」「シャカリキ・ファイト・ブンブン」「ブリザード」「跡部様」の10語を選出し、ひとつに投票していただきました。

 

 投票の結果、2016年の年間大賞を獲ったのは、こちらの語です。

f:id:mihoko_le:20161125004537p:plain

 日吉若のキャラクターソング「やれ!Do it!!」が568票を獲得し、1位となりました。その他の得票数は下図のとおりです。

f:id:mihoko_le:20161125005122p:plain

 他を大きく離しているのは、1位の「やれ! Do it!!」以外に、テニミュから「シャカリキファイトブンブン」、そして許斐先生の職業「ハッピーメディアクリエイター」です。「ハッピーメディアクリエイター」の初出は2014年3月と記憶していますが、2016年は楽曲「ハッピーメディアクリエイター時々漫画家」を披露したほか、その言葉を強く意識させるイベント等が数回にわたり開催されたためノミネートに至りました。

 なお、この10語以外にノミネート候補となった語は「どーやら今宵は満月になりそうだ」「3年A組」「制作総指揮許斐剛」「常勝の海より龍虎立つ」「ハッピーメディアサポーター」でした。

 

用語の解説

やれ!ドゥーイット!!【やれ! Do it!!】

日吉若のアルバム『下剋上*1に収録されている楽曲のひとつ。10月15日・16日に開催された「テニプリフェスタ2016」でのパフォーマンスが話題となり、19日にはiTunesのアニメ部門ダウンロード数で1位を獲得した*2

 

シャカリキ・ファイト・ブンブン【シャカリキ・ファイト・ブンブン】

「ミュージカル『テニスの王子様』」3rdシーズン青学VS山吹」公演より使用されたアンコール曲のタイトル。また、その曲中に登場する一節のこと。

 

ハッピーメディアクリエイター【ハッピーメディアクリエイター】

許斐剛先生の職業のうちのひとつ。

②「ハイパーメディアクリエイター高城剛氏は、現在の肩書きがつく以前に「ハッピーメディア・クリエイター」を名乗っていたとされている。*3

 

 かれらはほんとうにいるんです【彼らは本当にいるんです】

1月に開催された「許斐 剛☆サプライズLIVE ~一人テニプリフェスタ~」において、3DCGのキャラクターがリアルタイムのモーションキャプチャーで動いていたことから、許斐剛先生が発した言葉。この発言はDVD・BDにも収録されている。*4

 

かなしいね…キミがちかすぎて【悲しいね…キミが近すぎて】

許斐剛先生のサードシングル。*51月のライブで初披露。その際、「マンガの中のキャラクターが読者のことをほんのり好きになる」歌詞と紹介された。

 

あとべさま【跡部様】

跡部景吾のこと。毎年流行語にノミネートされている。

 

ギリッ…シャ【ギリッ…シャ】

『新テニスの王子様』Golden age180話*6において、ギリシャ代表選手タラッタ・ヘラクレスが放ったサーブの構えおよびインパクト時の効果音。なお、このサーブで放たれたボールがバウンドする時の効果音は「ギリシャ」である。

 

リザード【ブリザード

①「ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン青学VS氷帝」公演中に歌われる楽曲のワンフレーズ。

使用例:「昨日はマチソワブリザード浴びた」「もう1か月も氷帝見てないからさすがにブリザード浴びたい」

②大吹雪・暴風雪。*7

 

もぬもぬ【もぬもぬ】

「ハッピーメディアクリエイター時々漫画家」*8歌詞中の一節。既存の日本語にはない語で、副詞のはたらきをしていると見られる。詳細は「もぬもぬ」についての記事を確認のこと。

 

 

以上です。

アンケートの拡散および回答にご協力くださったみなさま、ありがとうございました。

今年は許斐先生関連の言葉が際立った一年のように感じられます。また、年間大賞の日吉若をはじめ、越知月光や跡部景吾など、氷帝学園の活躍も目立ちました。来年はいったいどんな名言がでてくるのか楽しみですね。

それでは、テニプリフェスタ2016において、昨年の年間大賞「財前ワンダホー」が発声されたことを祝い、2016年テニプリ新語・流行語大賞の発表記事を締めさせていただきます。来年もテニプリにとってすばらしい一年になりますように。

 

※当企画は個人の趣味でおこなっているものであり、公式とは一切関係ありません。

★選考協力:井田さん・うみさん・しーかさん・しぶやさん・ナツさん

*1:

新テニスの王子様「下剋上」

新テニスの王子様「下剋上」

 

*2:https://twitter.com/MasamiPnck/status/788409650513186816

*3:

ウメカニズム―楳図かずお大解剖

ウメカニズム―楳図かずお大解剖

 

 

*4: 

 

*5:

悲しいね・・・キミが近すぎて(DVD付)

悲しいね・・・キミが近すぎて(DVD付)

 

*6: 

新テニスの王子様 18 (ジャンプコミックス)

新テニスの王子様 18 (ジャンプコミックス)

 

*7:blizzardの意味 - 英和辞典 Weblio辞書

*8:

 

威を借られる虎

 劇団の女優をしていた友人がいる。彼女は、私がテニミュのファンだと話した数年前、苦笑いで「ああ、テニス」と言った。「舞台関係の人は、だいたい『ああはいはい、テニスね』って感じでいるよ」とも。

 彼女はその後劇団を辞めてしまったので、いま業界でテニミュがどう扱われているのかはわからない。だが、一市民として感じるのは、テニミュは色眼鏡だということだ。

 

 そんなことを思い出したきっかけが、このツイートだった。

f:id:mihoko_le:20161123123617j:plain

 該当ツイートはすでに削除されており、代わりに下記のコメントが投稿されている。

 

 この投稿から「テニスはいらない」だけを切り取ると、立派なニュースの見出しができあがる。それくらいインパクトのある表現だ。

 「彼」とは、小越さんのことをさしている。「彼の履歴書にテニスはいらない」という文は、小越さんがすでに『テニミュ』を離れたところで活躍し、評価されている証拠だ。続く「経歴とか投げ捨てて純粋な目で彼を見たい」との言葉は、プラスにもマイナスにも捉えらえるが、このツイートをした方が『テニミュ』という色眼鏡をもっているからこそ生まれたのだろう。

 

  世の中にはさまざまな色眼鏡がある。芸能人の名前の前につく「元タカラジェンヌ」「仮面ライダー出身俳優」「朝ドラ主演女優」「東大出身」などは、視聴者にある種の先入観を植え付けはするが、その人物の経歴に華を添え、箔をつける役割を担っているだろう。

 そういった色眼鏡のひとつに「テニミュ出身」がある。

 最近は、「あの斎藤工さんや城田優さんも出演していた『テニミュ』」などと、出身俳優の名前が『テニミュ』の枕詞になることも多い。この場合、彼ら「“テニミュ出身”者の名前」が、『テニミュ』に箔を付けている。

 では、「テニミュ出身」の肩書きは、芸能人としてのテニミュ出身者の価値を高めているのだろうか。

 

 ここで、さきほどの小越さんに関する発言を思い出したい。「経歴とか投げ捨てて純粋な目で彼を見たい」とは、『テニミュ』に出ていたことが、彼の演技を観る際になんらかの影響を与えており、それを抜きにして現在の彼を評価したい、という意味だろう。実際に、「彼を称する時に過去の偉業を持ち出さなくても今の彼は誰もが目を見張るほど素晴らしい」との投稿が追加されている。

テニミュ出身」という肩書きは下駄になりうるかもしれないが、4年間で500公演以上を主演したという「偉業」は、小越さん自信がテニミュでつけた箔だ。つまり、小越さんは、『テニミュ』を通して自らの存在に箔をつけたのだ。単なる「テニミュ出身」とは異なる肩書を、彼は持っている。彼はプリンス・オブ・テニミュと呼ばれるほど『テニミュ』に貢献した人間だが、今後はその「偉業」を超える活躍を期待されているのだろう。

 

 では、あらためて「テニミュ出身」の肩書きは、芸能人としてのテニミュ出身者の価値を高めているか考えてみたい。テニミュはメチャメチャアツくて、キャストさんもスタッフさんもマジでがんばってて、テニスの王子様は本当に最高で、ここらへんの界隈では超名門のアカデミーみたいな感じの存在だってことを、私たちファンは誇りにしている。しかし実際には、私たちが思っているほど、「テニミュ出身」はご立派な肩書きではないのかもしれない。だからこそ、出演者だけでなく、その中身も見て、評価してほしいと思う。

 

 2か月前まで越前リョーマを演じていた古田さんは、このように語っている。*1

憧れだったテニミュ。そりゃこれくらいの年代で役者やってて男の子だったら出たいよ。

 オタク冥利に尽きるお言葉。

 テニミュが「そりゃこれくらいの年代で役者やってたら出たい」「憧れ」の存在であり続けると同時に、「テニミュ出身」の肩書きが、彼ら出演者にとっての威となるよう、ひとりのファンとして願っている。

 テニミュよ、威を借られる虎たれ。

2016年9月25日18:00公演の記録

“The show must go on.”を、『テニスの王子様』の世界観に合わせて訳すとどうなるのだろう。

 

 そんなことを考えながら、スクリーンを観ていた。会場の水道橋から直線で数十キロ離れた幕張のライブビューイング会場にも、舞台上の緊張感が痛いほど伝わってきた。生で見ているわけではなくとも、観客皆が息を飲んだのがわかった。おそらく、日本中、海を渡った街の映画館にも、同じ空気が流れていたのだろう。皆、胸をしめつけられるような思いをさせられたのだろう。狂気を感じるほどの「手塚国光」に。

 

「ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 青学VS氷帝」の千穐楽公演において、手塚国光を演じる財木さんが、舞台上でケガをするというアクシデントが発生した。

  WOWOWでは「稽古場から感動の大千秋楽まで完全密着!」と銘打った特番を流すらしい*1。もしも私がWOWOWのカメラマンだったとして、こんなアクシデントを見たらガッツポーズをしてしまうに違いない。しかし、きっと「テニミュ」は、この“ミス”をおおやけにはしないだろう。知らんけど。だからここに記録しておきたい。

 

 流血の原因は何だったのか、詳しいことはわからない。私はその瞬間を観ていないので、「おそらくこういうことがあったんだろう」と推測するしかできない。私が知覚したのは、3幕の「一騎討ち」では、いつも安定している手塚の歌声が不安定で、ラストの「生み出していこう」が全く伸びていなかったこと。そのあとスクリーンに映し出された手塚のユニフォームに血がついていたこと。手塚の右頬を血が伝い落ちていたこと。それでも試合は続けられたこと。ユニフォームについた血が、みるみるうちに増えていったこと。それくらい。

 手塚の、3Dプリンターで造られたような美しい輪郭に沿って落ちる血は赤黒く、汗を吸ったユニフォームを汚す血は薄い朱色に見えた。全国氷帝公演で桃城が額から流す血や、四天宝寺戦で河村のユニフォームを汚す血糊とは、なにもかもが違った。色や質感だけの問題ではなく、それを取り囲む空気が。

  その場面は、まさに試合の、いや、この公演最大の見せ場だった。肘に古傷を抱えながら、自分の腕を犠牲にしてでも勝利しようとする手塚。原作に描かれたその手塚の姿と、頭部から血を流しながらも試合を続ける舞台上の手塚の姿が重なって見えた。

 話が進み、手塚は肩の痛みのため膝をつく。それでも試合を続けようとする手塚に、チームメイトは「棄権しろ」と説得を試みる。ここでの鬼気迫ったせりふや、観客から見えないよう手塚を囲み素早く処置をする青学メンバーの対応はすばらしかった。そして越前は、なにも行動を起こさず、いつも通り階段に座っていた。全員が、『テニスの王子様』の世界を崩さず、キャラクターを崩さず、事故などなかったことにした。

 そして、手塚と対峙する跡部も、もはや2次元なのか3次元なのかわからないほどの気迫で試合を続けていた。「ちっとも嬉しそうじゃねぇ」表情も、長いモノローグも、演技と現実が重なって、怖いくらいだった。

 フィクションが、目の前でノンフィクションになっていき(原作では手塚は流血してないけど)、しかし演者たちはあくまでもフィクションであろうとする。“The show must go on.”――「まだ試合は終わっていない」の精神で。ものすごい瞬間に遭遇したような気がする。